ステージ4の肺がんは治る?

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ステージ4の肺がんと診断されたとき、「治る可能性はあるのか」「どのような治療が選べるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
一般的に完治は難しい段階とされていますが、近年は治療法の進歩により、進行を抑えながら生活の質を保つことを目指す治療も行われています。

このページでは、ステージ4の肺がんの生存率の考え方や治療の基本、転移がある場合の治療方針について整理してお伝えします。

ステージ4の肺がんが治る
可能性はあるのか

ステージ4の肺がんは、がんが離れた臓器にまで広がった段階であり、一般的に治癒(完治)を目指すのは難しいと考えられています。
国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計結果では、ステージ4の肺がんの5年実測生存率は約8%、10年実測生存率は約2.3%という数値が報告されています。

参照元:国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計結果(https://hbcr-survival.ganjoho.jp/search)
上記URLより肺癌ステージ4で検索、2015年~5年実測生存率、2012年~10年実測生存率の数値。実測生存率は、死因に関係なく、すべての死亡を計算に含めた生存率です。

しかし、ここで諦める必要はありません。近年は分子標的薬や免疫療法、放射線治療などの進歩によって、腫瘍の進行を抑えたり、症状を和らげて生活の質(QOL)の維持を目指したりする治療も積極的に行われています
治療の方針は、がんのタイプや遺伝子変異の有無、全身状態などを踏まえて、一人ひとりに合った形で検討されます。

ステージ4の肺がんに対して
行われる治療の種類

化学療法(抗がん剤治療)

抗がん剤を用いて、全身に広がったがん細胞の増殖を抑える治療で、単独で行う場合もあれば、他の治療と組み合わせる場合もあります。
副作用として、吐き気や倦怠感、脱毛といった症状がみられますが、近年は支持療法の進歩によって、副作用の症状を軽減しながら治療を続けるケースも増えています。

支持療法…がん治療の副作用、合併症、後遺症、またはがん自体の症状を予防・軽減し、患者の身体的・精神的な苦痛を取り除くケアのこと。

分子標的薬による治療

EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子など、がん細胞の増殖・生存に関わる特定の分子(タンパク質や遺伝子)を効率よく狙い撃ちする薬による治療です。該当する遺伝子が見つかれば、治療の選択肢が大きく広がります。
標的とする分子によって副作用の出方は異なります。主な副作用は、皮膚障害(湿疹、乾燥、爪囲炎)、下痢、高血圧、肝機能障害、間質性肺炎などです。内服薬もあり、日常生活と治療を両立しやすくなっています。

免疫チェックポイント阻害薬

本来なら体内でがんを攻撃する働きをもつ免疫細胞が動きを弱められている状態を解除し、がんに対する免疫反応を高める治療です。
非小細胞肺がんで用いられることが多く、長期間にわたって効果が続くケースも報告されています。その一方で、免疫が過剰に働いて臓器に炎症が起きる場合もあります。

放射線治療

高エネルギーの放射線を用いてがん細胞のDNAを破壊し、細胞を死滅させる局所がん治療法で、ステージ4では、咳や血痰、痛みなどの症状を和らげる目的で行われます。
がんが特定の部位に限局して大きな負担を生じている場合には、放射線治療が有効な選択肢となり得ます。身体への負担は比較的少ないとされていますが、照射部位によっては炎症や倦怠感が出る場合もあります。

治療の組み合わせと選択の考え方

ステージ4の肺がんでは、単一の治療に限定せず、複数の治療を組み合わせながら進行を抑えていく方針が一般的です。
また、副作用をできるだけ抑えながら長く続けられる治療を選ぶことも重要です。治療方針は定期的に見直され、患者さんの体調や生活の希望を踏まえて柔軟に調整されます。

ステージ4の肺がんが
転移しやすい場所

肺がんは、血液やリンパの流れに乗って身体のさまざまな部位に転移しやすいという特徴があります。
転移は大きく「血行性転移」と「リンパ行性転移」に分けられます。

血行性転移

血行性転移とは、がん細胞が血液の流れに乗って別の臓器に転移することを指します。
肺がんでは、反対側の肺や脳、骨、肝臓、副腎などへの転移が比較的多くみられます。

  • 脳に転移した場合…頭痛や吐き気、手足のしびれ、意識障害などの症状が現れます。
  • 骨転移…腰や背中、関節の痛みが出やすく、骨折のリスクも高まります。
  • 肝臓への転移…腹部の張りや倦怠感、食欲低下などがみられます。

血行性転移に対する治療は、全身に作用する薬物療法が中心になりますが、部位によっては放射線治療を併用する場合もあります。
代表的なのは、脳転移による神経症状や、骨転移による痛みの軽減を目的とした局所的な放射線治療です。

リンパ行性転移

リンパ行性転移とは、がん細胞がリンパ管を通ってリンパ節へ広がることを指します。
肺がんでは、肺の周囲や縦隔と呼ばれる胸の中央部のリンパ節、さらに鎖骨周辺のリンパ節に転移がみられます。

リンパ節転移自体は、初期であれば自覚症状が少ない場合もありますが、進行すると咳が悪化したり、声のかすれや息苦しさを感じたりするなどの症状が出てきます。リンパ節が周囲の臓器や神経を圧迫することで症状が現れるケースもあります。

リンパ行性転移も治療の中心は薬物療法ですが、転移したリンパ節が局所的に症状を引き起こしている場合には放射線治療が検討されます。

転移の場所によって
治療が変わることもある

肺がんの転移パターンには個人差があり、その数や部位、症状の程度によって治療方針は変わります。
全身治療を基本としながらも、症状が強い部位には局所治療を組み合わせることで、生活の質を保つことを目指します。そのため、画像検査を用いて転移の状態を定期的に評価し、状況に応じて治療内容を見直す必要があります。

ステージ4の肺がんでも局所を
狙った治療は検討できる

ステージ4の肺がんでは全身治療が中心になりますが、転移が限られている場合などは、局所を狙った治療も検討されます。
その代表的な方法が放射線治療です。

放射線治療は、腫瘍の部位に照射してがん細胞のDNAを破壊して増殖を抑える治療で、咳や痛み、神経の圧迫など、生活に影響する症状を和らげる目的でも用いられます。
近年では画像診断技術の進歩により、より精度の高い照射が可能になっています。そのひとつが「トモセラピー」で、CT画像を用いて腫瘍の位置や形状を詳細に確認しながら放射線を照射する方法です。複数の方向から放射線を当てることで、周囲の正常な組織への影響を抑えつつ腫瘍に必要な線量を集中できるという特徴があります。

こうした局所治療は薬物療法と併用されることもあり、全身治療の妨げにならない範囲で症状の改善や局所制御を目指します。
治療が適しているかどうかは、転移の数や部位、全身状態などを踏まえて慎重に判断されます。

相談先の選び方

再発や転移を伴うステージ4の肺がんは、治療の選択肢が複雑になるため、どの医療機関に相談するかが重要なポイントになります。

  • その医療機関が再発・転移といった進行がんの症例に対応しているか
    進行がんの治療経験が豊富な医療機関では、病状に応じた現実的な治療方針の提示を受けやすくなります。
  • 画像診断に基づいて治療方針を丁寧に評価しているか
    画像をもとに転移の場所や数、症状との関係を詳しく確認することで、全身治療と局所治療をどう組み合わせるかを検討しやすくなります。

治療の選択肢が複数ある場合には、セカンドオピニオンを受けられる医療機関に相談するのも有効です。
別の視点から治療の可能性や注意点を整理できる場合があります。

Summary

ステージ4の肺がんという治癒が難しい段階であっても、全身の状態によっては放射線治療による局所制御を行いながら、薬物療法を組み合わせて進行を抑える治療を検討できます。こうした治療によって、症状の軽減や生活の質(QOL)を保ち、生存期間の延長につながる可能性が十分に見えてきます。

治療の選択肢や目標はひとつではありません。信頼できる医師と相談しながら、その時々に合った治療や支え方を考えていくことが、ご本人とご家族の安心につながっていくはずです。

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略歴
  • 1980年 灘中学校、灘高等学校を経て東京大学医学部医学科卒業
  • 1980年6月 東京大学医学部附属病院放射線科研修医
  • 1981年1月 東京大学医学部附属病院放射線科助手
  • 1985年7月 都立豊島病院放射線科医員
  • 1987年4月 東京大学医学部附属病院分院放射線科講師病棟医長
  • 1988年7月 同上 英国 Royal Cancer Institute留学のため休職
  • 1989年6月 同上 復職
  • 1991年5月 東京大学医学部附属病院放射線科講師病棟医長
  • 1991年5月 放射線医学総合研究所特別研究員(重粒子線)
  • 1992年4月 東京大学医科学研究所非常勤講師
  • 1992年11月 総理府技官(放射線医学総合研究所臨床障害部)
  • 1995年7月 東京大学医学部放射線医学教室助教授
  • 2002年4月 国際医療福祉大学保健学部放射線・情報科学科教授
  • 2008年 医療社団法人 愈光会 Clinic C4設立